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1.「正しいはず」という正常化のバイアス
  一つ一つの判断は大きく間違っていないが、情報が少なかったり過去(歩いてきた)の情報や判断とのつながりを無視して
  、現在見えているものだけで短絡的に判断する。

2.「せっかくだから」
  人は、今したばかりの結果を無にする行為には抵抗がある。特に下山道では登り返すには大きな抵抗が働き、「せっかく此
  処まできたのだから」と言う心理状態に陥りや
すい。その結果「とにかく下って行けばなんとかなる」と思い込ませてしま
  う。下るほ
ど分岐していく尾根の特徴と相まって道迷い発生を増やしている。

3.「なんとかなる」、根拠なき楽天主義
  山歩きに道迷いはつきもの、多くの場合多少時間がかかっても自力で復帰できる。反面、それが道迷いを軽視する。「自分
  ならどうにかなる」といった「根拠なき楽天主
義」に人はとらわれやすい。しかし、「いつものトラブル」と山岳遭難は紙
  一重である。

4.「間違ったら恥ずかしい」
  リーダーの心理。プライドが働き不安を無理に消し去ろうとする。よき安全弁である「不安」が機能不全に陥る。

5.自信過剰傾向とリスク・ホメオスタシス
  経験を積み読図力が高くなると難しい山やルートにも挑戦するようになる。自信過剰傾向から自分の力量を越えている事も
  ある。結果として高くなった読図力を打ち消し、
むしろ道迷いを増やしている。自分の力量を客観的に把握する努力と「リ
  スクを下げた
い」と言う強い意志のみが道迷いを減らす事が出来る。

  ※「リスク・ホメオスタシス」;人は安全対策でリスクが減ると、その分だけ行動を危険な方向に変化させるの    で、                長期的には安全対策は無効になる。

6.「本当に戻れるだろうか?」
  自力ではどうしようもない⇒恐怖心が訪れる⇒「パニック」になる⇒合理的な判断が出来なくなる⇒滑落、転落⇒遭難

7.その他
  地理的不案内、計画の無理、日没、パーティーの分離 など

8.まとめ
  道迷いはルート維持の失敗と現在地が把握出来ないことから始まるが、「自分は間違っているかもしれない」となかなか思
  えず、情報を自分の都合良く解釈する。道迷い
は様々な要因から生まれ、ルートの逸脱と現在地の見失いが、人間の心理的
  傾向によっ
て、悪循環的に拡大し目的地への到着を妨げる現象だ。

 現在地把握の補助技術

 道迷いになる大きな要因として現在地把握が出来ないことがある。地図読み以外の補助技術を考える。
   1.歩測による距離の推測
   2.コンパスを使う
     地図上で位置が分かる目標物を二カ所計る。
   3.高度計
    地形を確認して高度計を見て場所を把握する。 
     誤差=0.00366×気温×高度  (標高差1000m地点で5℃変化すると18mの誤差になる)
   4.GPSの利用(得たもの、失ったもの)
    道迷いの判断の必要がなくなり、道迷いがなくなる。が、自分で登るのではなく機械が山に連れて行ってくれるみたいに
   、山を眺めたり周囲の地形や森の種類を確かめることもなく、画面を見ていればよい。しかし、人はなぜ山に登るのか、
   大自然と言う日々変化し人間の力の及ばない大きな存在と、自分の能力を使って格闘する行為が楽しいから。さらに山頂
   へ至る魅力有るルートを登り切ったことや、山頂に立った達成感が素晴らしいからとおもわれる。

      参考文献;「山岳読図大全」村越 真著 ()山と渓谷社 (¥1.880+税)

10月第一例会 テーマ「地図読み」

     期日 10月1日(火)  講師 Te.I  参加者21名

誰もが一度は陥ったことのある道迷い…遭難まではいかなくても、あれ?おかしいな?これでいいのかな?という不安を抱えたまま歩き進めたことがあると思います。今回はその心理から道迷いを考えました。冷静な心と確かな読図技術が道迷いを防ぎます。次回は是非実技を…という多くの声がありました。

次ページは当日の資料です。この他に「山岳読図大全」の抜粋資料がありましたが、皆さま是非実物をご覧になってください。とても勉強になります。    (Lantana記)

 高度計の誤差               

10/1の第一例会で高度計の誤差に「温度」がどうして関係するのかとの言う質問があった。以下調査した結果を記載する。

1.気圧式高度計
  原理は高度が上がると気圧は低下します。空気はそこより上の空気が地球に引き寄せられる力(重力)を下向きに受けていま
  す。高度が上がるほどそこより上に残っている空気が少なくなる為、気圧は減少
します。この原理を用いて測定した気圧値か
  ら高度を計算します。

  国際民間航空機関(ICAO)が定めた標準大気では、「平均海水面での気圧が1012.25hPa、気温15℃」での条件で以下の式で気
  圧
()から高度()の計算が出来ます。

   H=44330.25×〔1(/1013.25)0.190263〕 (覚えなくても良い)

 測定した気圧()から高度()を計算して表示するのが気圧式高度計です。

2.標準大気の違いによる誤差
   大気の温度によって標準大気の値が変化する。大気の温度が高い夏場では空気の密度も少なくなり、同じ高度に登っても気圧
  の変化はより少ない。逆に、温度が低い冬場では空気の密度が大きく、同じ高度に
登っても気圧変化はより大きくなってしま
  う。(計算の条件値が変わってくる)

 従って、大気の温度によって標準大気が違ってくる(誤差が出る)ので、高度計に表示される高度もその分誤差が生じる。
  標準大気での違いで影響の大きいのは海面温度とのこと。

 その誤差は真冬と真夏で約5l位らしい。

3.その他
  気圧の変動は半日の短周期変化を持っている。毎日AM3時とPM3の一日2回がもっとも気圧が低くなり、AM9時とPM
  9時の一日2回最も高くなる。結果的に約
30mの短期変動をする。(Te.I記)

2013 10月学習会「読図講習」に参加して    

高所登山から低山藪山や里山まで、どんな山も歩いているI崎先輩の講習ということで、期待して参加させて頂きました。

道迷いは、読図等の技術的問題以上に、迷うはずがないという思い込みや、どうにかなるさという過信など、心理的要素が大きいという講義を聞き、以前、厳冬期の上州武尊山で半日彷徨ったことを思いだしました。

赤布をたくさん付けたから、多少荒れても帰れるという過信でした。テントに泊まった一夜の間に大量の降雪が有り、更に下山日の吹雪で、赤布はほとんど見つかりませんでした。

地形図とシルバコンパスで現在地を割り出す技術は、今まで何となくやっていたことの確認をさせて頂きました。現在はGPSの価格が下がり、山へ持参する方も増えて来ましたが、乾電池で動く電気製品なので、故障というリスクは常にあると感じます。GPSが使えなくなったら・・ということを想定した読図技術の必要性は高いと感じました。

 また、高度計の誤差が気温によって生じることには、驚きました。天候による気圧変化のみが、高度計を修正しなければならない要因と思い込んでいました。

☆高度計誤差=0.00366×気温×高度☆

ベースプレートコンパス(シルバコンパスのことですよね?)利用時のタンジェント値のお話の際には、O野会長からの補足として、簡易な磁北線割り出し方法を説明され、磁北線未記入の地図であっても、山中である程度正確な本来の北を割り出す方法を覚えることが出来ました。

 この講習を通じて、I崎先輩が言われていた、常に最悪の事態を想定し読図を行うべきということを、今後、更に心掛けようと思います。

都道府県毎の山岳の様相が違うので、一概には言えませんが、山域によっては、全遭難事故数に占める、道迷い遭難の割合が、他の遭難要因を上回ると聞きました。山岳会員として、読図に必要な技術を磨き、また思い込み等の心理的要素が遭難に結びつくこと等を、年に一度の講習会で、今後も確認出来たらなと思います。とても勉強になった学習会でした。ありがとうございました。    (Su.M記)

資料  道迷いの心理