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山での外傷とその対処        大宮労山 教育部

登山中に発症し得る疾患
 ・非外傷性疾患
   呼吸器・循環器・消化器・神経系の疾患
 ・外科的な疾患
   骨折ならびに整形外科的疾患
   熱傷
   頭部外傷
   胸部外傷・腹部外傷
   軟部組織外傷

軟部組織外傷とは・・・? 
  ・身体の表面からの柔らかな部分の外傷をいう。
  ・問題となる組織は、皮膚、腱、筋肉、血管、神経などである。
  ・外傷の原因は、歩行中の転倒・転落、雪渓でのスリップ滑落、飛来した落石、ピッケル・スキーなどの登山用具や
  ナイフ・鉈などのキャンプ用品の誤用による受傷である。

  ・これらの原因により身体の表面についた傷を創傷という。 

山で見られる創傷の種類
   ・擦過傷;皮膚の表面がはぎ取られ真皮が露出した傷
 ・挫 傷;打撲により組織が圧迫され皮下出血や浮腫が生じた外傷
  ・挫 創;表皮が広く剥がれ皮下組織が解放している創
  ・裂 創;鈍器による強い圧迫で皮膚が引きちぎれた創
  ・切 創;ナイフ・ガラスなど鋭利なもので皮膚に生じた創
  ・割 創;斧などの重量のある刃物を打ち下ろした際に生じる創
  ・咬 創;熊などの動物に咬まれたときに生じる創
  ・刺 創;鋭い刃物などが突き刺さった創
  ・杙  創;鈍棒が突き刺さり皮膚を貫通した創

創の洗浄 〜とにかく洗う〜
 ・まず応急処置として創表面に付着している汚れを洗い流すことが大切である。
   洗浄する液は薬液より水が良い。
  ・創の十分な浄化が創傷をきれいに治療させる必須条件である。

どうやって洗うの?
 ・ペットボトルの水で洗う
     ・方法として、ペットボトルのキャップに穴をあけ、水圧をかけて傷の中の小石や土、草などの異物を取り除く
  ・痛くても血がさらに滲んできても、とにかく徹底的に洗う。
  ・創の感染は6時間以降に始まる。その前に創を清潔な状態にすることが、今後の治癒に影響する。
  ・沢の水は使用しない。一見きれいに見える水でも雑菌がいる。
  ・常に水を携帯する。水は傷の洗浄、眼内の洗浄などの医療的行為だけでなく飲み水にもなるし、体も頭も洗える。
   非常に優れたものなので、必ず山行には
500mlのペットボトル&穴あきキャップは携帯するべき。

次に止血! 
  ・出血している場所を直接圧迫する。激しい出血でも健康人なら必ず止まる。止まるまで落ち着いて圧迫し続けことが
   肝要である。

  ・出血部より近位(心臓により近い部分)で四肢を圧迫するのは倫理的ではあるが、圧迫時間が長いと神経麻痺を
   起こす恐れがある。

  ・圧迫する場合、血液からの感染予防のため手袋を装着する。手袋はコンパクトで、
   かつ丈夫・コンパクトに収納できるため、ファーストエイドには必須アイテム。
どうしてもなければ、
   ビニール袋に手を突っ込み、手袋代わりにする。多少ゴワゴワするが、血液感染で他の病気になってしまうことを
   考えたら実践すべき。


止血の際のガーゼは必要か?
 ・ティッシュなどで傷を覆うと、せっかくきれいに洗った創部に、ちぎれたティッシュが新たに付着してしまい、
   異物として再度洗浄が必要になってしまう。できればガーゼやきれいな布などで圧迫できると理想。
   コンパクトで清潔な女性用ナプキンなども可。

 ・分厚いタオルなどの上から圧迫しても、力が直接伝わらないので不向きである。ピンポイントに力が加わらなければ、
  止血は成功しない。

 ・止血中は、やたらに傷を見ることはしない。続けて5分以上の連続した圧力がなければ圧迫止血にはならない。
  「もういいかな?」って覗いた時点で、圧迫は解除されてしまう。


ここで問題?
 そもそも、人間の体に入っている血液量はどのくらいなのか?
   A;50kgの体重で約4Lの血液が体を廻っています。(80ml/1Kg
 ・どのくらい出血すると危ないのか?
   A;3分の1が失われると出血性のショックが起きるとされている。
 ・因みに、三角巾が全体的に湿る量はどのくらい?
   A;100mlが目安です。

被覆???  〜絆創膏を使って傷を保護すること〜
 ・できるだけ清潔な布で創傷を覆い医療機関を受診する。
 ・受傷より6〜8時間以内なら創内に進入した細菌はまだ著しく増殖せず、きれいな組織修復を得ることができる。
 ・山でのポイントは、止血した後、山行の妨げにならないように傷を覆い痛みが増強しないこと。
  それには適切なドレッシング材を選ぶことが必要。

 ・止血の具合に合わせて、解放するか閉鎖するかを判断する。

私だったら・・・
・じわじわ出血パッド付き閉鎖式ドレッシング材か防水フイルム+ナプキン
 ・靴ずれで赤くなった皮膚防水フイルム
 ・靴ずれなどの水疱;パッドが付き閉鎖式ドレッシング材
 ・大きく開いた傷;テーピングで皮膚をよせた後、三角巾にて軽く圧迫して固定

ファーストエイドについて考える 何が必要なのか?
 ・実際にファーストエイドと言えども、何を揃えればいいのか?
 ・必要なもの、共用できるものを考え、よりコンパクトに!三角巾は包帯にも汗拭きタオルにも早変わり。
 ・自分が行える処置の限界を知る。持っていても、使えなければ意味がない。
                  サムスプリントや人工呼吸のフェイスマスク必要?

 ・いろいろな情報に惑わされずに、自分なりに工夫する。本などの情報に惑わされないで。
                            消毒液必要ですか?、カットバン必要ですか?