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 百澤バス停には、カラフルな服装の登山者があふれている。年齢は日本の中高年登山者に比べて十歳位若く見えるが、日本の山ガール年齢の方は少ない。男性女性同数くらいで、皆とても元気そうである。背中のリュックは小型で、私たちのような大型のリュックは見られない。山小屋の宿泊は予約のみで宿泊者数が限られているので泊りは少ないのだろう。百澤寺は大きな川沿いのお寺で河原には無数の石積みがある。人々が願をかけて積んだものなのだろう。お寺にお参りし、トイレを済ませてさぁ出発である。

昨夜は韓国のパーティーチーム5人と顔合わせをし、行程や食事などの説明を受けた。金さん姉妹や朴さんが行動食や3食分の食事の用意、ガスやコッフェルの準備をして下さっていた。一人分の割り当てはインスタントラーメン二食、ご飯二食、キンパプ(韓国海苔巻)一本、朴さん手作りのヤクシク(木の実や黒砂糖、シナモン味の韓国おこわ)一切れ、大きなリンゴ、チーカマ三本、ヌガー、飴などである。その他男性は大量のキムチを分担される。日本からお土産用にSさんが用意した米・いも・そばの焼酎三本も持っていくことになる。山小屋では毛布が借りられるので、シュラフは必要ないとのことで少々心配だが、置いてゆくことになり、リュックは大きいが中身は軽い。それに日本女性陣は食事の多さにびっくりして、ラーメンとご飯、リンゴを半分ずつ食べようと二人分置いてゆくことにした。

 川沿いの平地を歩き始め、緩やかな登り坂が始まった頃、水簾洞待避所で早めの昼食を摂る。昼食と言ってもラーメンを作り、ご飯を温め、3種類の漬物(キムチ2種、しし唐と梅の実のしょうゆ漬け)をたっぷり用意して下さる。できたラーメンを器にとりその中に温めたご飯を入れて食べると良いと教わる。ラーメンはもちろん私にとっては辛い。キムチも辛い。しし唐はたまに辛い。こりこりの梅の実がとてもおいしい。食後にコーヒーもいただき、いよいよ上り坂を進む。渓谷沿いを水の流れる音を聞きながら、紅葉の木々を愛で、滝を楽しみ、飽きさせない美しさである。雪岳山への登山道は案内図によると六つほどあるようだ。私たちの歩く登山道は比較的行程が長いが、景色が良いということで韓国リーダーの呉さんが選んで下さった。呉さんは雪岳山にはなんと百五十回くらい登っているという。

 国立公園のためか、また、登山者が多いためか、登山道はしっかり整備されている。渓谷沿いの登山道であるので、昔ならロープが必要な場所も、しっかりとした鉄の橋や階段が作られている。滑りやすい階段や橋にはゴム製のタイルが敷き詰められている。

 呉さんを先頭に空の青、もみじの赤、川石の白、水の青緑が目にまぶしく輝いている中を、息を切らしながらも癒されながら登ってゆく。韓国チームは呉さんはじめ私たちよりは十歳くらい若いので、きっとペースが速いだろうに、私達ペースに合わせてくれている。徐々に高度があがってくるとにょきにょきと岩山が見えてくる。フリークライマーのSさんは「登てぇー」を連発している。やっと中青峰待避所を過ぎ、今日の終了地中青峰退避所に16時過ぎに到達する。まだ陽があるうちに着きほっとする。中青峰待避所は大青峰直下の山小屋でこの時期はとても人気があるらしい。予約は二週間前からインターネットのみの受付で一人四人分までしか一度に予約できない。日本からの予約は到底無理であった。 今回はSさんのお知り合いの日本人男性のビジネス相手の呉さんのご配慮でどうにか泊まることができた。小屋の予約だけでなく、登山仲間も集められ、韓国チーム五人、日本チーム五人で一緒に登山することになったのである。私にとっては初めての韓国旅行でもあり、このように親しく韓国の方とご一緒するのも初めてなので、呉さんのご配慮は本当にありがたいものであった。

中青峰待避所は120人用のこじんまりした山小屋である。宿泊の受付を待っている間、入り口付近でのんびりしていると、お隣にいる韓国女性グループから、朴さんから頂いたヤクシクに似た白いヤクシクを頂く。甘い豆が入ったもので、異なる地方のものらしい。私達は日本的な行動食を持ってこなかったので、お返しを差し上げることができずたいへん悔やんだ。SYOさんが持ってきた抹茶味のチョコレートをおすそ分けした。

 荷物をベッドに置き、早速夕食作りである。韓国の山小屋は食事の提供がないので、みな食材を持ち込み調理する。そのために立って調理、食事ができるようなテーブルが待避所には何台か設置されている。後から到着してテーブルがいっぱいになると、部屋の隅で座り込んで調理をしているグループもある。やはりラーメン、ご飯、キムチは当然、そのうえ韓国のブタ三枚肉の焼き肉、サムギョプサルを作っているグループもいくつもある。肉の量が半端でなく多い。見ている私はあっけにとられ、ぽかんとした顔で見ていると男性がにこにこ顔を返してくれた。山小屋にはアルコール類は販売していないので、アルコールなしでも楽しそうである。私達には日本製の焼酎があるので、あちら側は韓国チーム、こちら側は日本チームと向かい合い、お腹いっぱいキムチラーメンご飯を食べた。

 夕食の後は何もやることが無いので、ベッドで大宮労山のあれこれを話していると、妹の金さんが積極的に話に入ってくる。彼女は登山や旅行がお好きのようで、日本の山もいろいろ登っているという。北岳にも登っているし、ご主人と共に北海道にゴルフ旅行に来た時には、手稲山に登ったこともあるそうだ。日本語がとても上手で韓国の事などいろいろお聞きすることができた。

 ベッドには床暖房が設置され、夜は暑くて眠れないほどである。毛布を二枚レンタルすれば寝具を持ってくる必要はない。道理で韓国の方の荷物が少ないわけである。12(24)時ごろに目が覚めてしまい、トイレを済ませた後に夜空を見上げてみた。北斗七星がはっきりと、天の川も良く見える。下界を見下ろすと、東の海の束草の町の海岸線や建物の灯りが美しい。明日はその町に泊まり、おいしいお刺身を食べる予定になっている。

 翌朝は日の出を見ようと早起きして大青峰に登る。韓国で三番目に標高が高い。1708mの山頂の東側の岩場で一時間程日の出を待つ。山頂には続々と登山者が登って来る。早めに到着したお蔭で良い場所で日の出が見られた。雲の間から平たい太陽が見え始め、少しの間見えなくなったと思ったら、光り輝く太陽が地平線から昇ってきた。山頂は風の強いことが多く吹き飛ばされるほどらしいが、今日は風もなく穏やかで、お天気がよさそうである。朝食は少し下ってから摂るとのことで、下山を始める。昨日の登山道は内雪岳山地域であったが、今日の下山道は外雪岳山地域という。呉さんは両方を見せたかったらしい。下山道も渓谷と岩山の連続で、ギザギザ岩の恐竜稜線を望みながら、足元に気を付けながら下る。リーダーのIさんも私たちに是非見せたかったという風景である。渓谷好きの私はその美しさを十分堪能した。

 昼食は喜雲閣でやはり、ラーメン、ご飯、キムチであるが、私たちが二人分置いてきてしまったために、足りなくなったようで申し訳なかった。分担された食材は多いと思っても持ってこなければならない。これからは気を付けよう。私達がおしゃべりしていると若い男性が日本語で話しかけてきた。途中休憩をとっている時には、キンパプを一切れずつ分けてくれた。日本に良い印象を持っていることが分かってうれしい。

 鬼の顔に似た鬼面岩を過ぎた頃、呉さんが日本チームを先頭にして下さる。先頭になったSLは下りながらも、我慢できずに、時々小さい岩に取りつこうとしている。とうとう下りの終了地点、飛仙台に到着する。ロッククライミングができる大きな三つの岩山がそびえ、出口の管理棟には、ポトが書かれているボードまである。見上げる岩山のてっぺんまで登れたら気持ちがいいだろうなぁと見とれる。飛仙台は観光客も多く景勝地を楽しむ人々でにぎわっている。 ここの食堂でチジミやジャガイモもち、どんぐり豆腐トトリムのあえ物、マッコリで無事下山できたことを祝って乾杯する。甘くて酸味のあるマッコリで私も良い気分になってしまう。浮かれ気分で日本の上高地に似た渓谷沿いの道をぶらぶら歩き、大きな大仏のある神興寺を過ぎ、空岳山国立公園口に到着する。ここで金さん妹、男性の金さん、朴さん三人とはお別れである。私たちのために平日の三日間お休みして、明日からはお仕事である。Sさんから教えてもらった感謝の言葉「オジェー ウォルス チェルゴワッセヨー」を連発してお別れする。呉さん、金さん姉とはその後温泉に入り宿泊しソウルまで送って頂いた。韓国の方々とはまさに、一期一会の出会いであるが、それぞれの人柄が心に残る心優しい方々である。

 今回の山行では、韓国の登山事情、山容の違いなどを知ることができた。また、韓国ソウルの街並みや地下鉄、高速道路や、食べ物など実感できた。日本のメンバー皆さんとも和やかに交流でき楽しい五日間を過ごすことができた。

 韓国の山行に興味のある方はリーダーIさんにお尋ねになると良いですよ。  (Mi.S記)

コースタイム
 10/14 
     7:03百澤(ペクタン)バス停発=7:45百澤寺(ペクタンサ)−9:05永矢庵(ヨンシャン)−
   
10:00水簾洞退避所(スリョンドンデビソ)10:4014:15鳳頂庵(ポンジョンアム)−
     15:48
小青峰(ソチョンボン)−16:15中青待避所(チョンチョンテピソ)山小屋泊 
       歩行距離約12km 歩行時間7時間半
 10/15
     5:30中青待避所発−5:50大青峰(テチョンボン)−7:20小青峰−8:50喜雲閣待避所(ヒウンガクデビソ)10:00
    
11:05陽爆山荘(ヤンポッサンジャ)11:2013:05飛仙台(ピソンデデピソ)14:00
    15:00
雪岳山公園(ソラクサンコンウォン)
       歩行距離約13 km 歩行時間7時間

韓国チーム;L呉さん、金さん、朴さん、金さん姉妹
日本チーム;LI村、SLS田、M浦、S田、東海林(他山岳会)

韓国雪岳山紅葉山行 韓国パーティーと共に

山行実施日;10月13日〜17日
参加メンバー;Yu.I、To.S、Hi.M、Mi.S、G5