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氷壁を登り、雪庇を削り、

  稜線に飛び乗るとは!

ゴールデンウィークはどこを登るか。雪山4年目昼闇山が妥当なところと思うが、日程的に無理。昨年、悪天候のため敗退した、クズバ山から大日山にするか迷う。山行目的は「雪稜登り」とある。「行程は長いが行こう」と声をかけられる。ダメもとで申し込むと、山行計画書が届き、戸惑う。

5月2日、夜、出発し、馬場島の駐車場にて仮眠。リーダーから天気が安定していることから、突っ込むと説明がある。東小糸谷は、ズブズブで入れないことから、中山を超え、クズバ山を目指す。左側に見える剱岳の雄姿に励まされるも、手前のピークにも届かず、1日目が終わる。夕食は、肉団子入りの酢豚、隠し味のケチャップが効いて旨い。明日への活力をいただく。

 ザックをみんなで引き上げる。最後にサブリーダーがロープを回収し登ってきた。なんと、稜線の裏側は室堂だった。いや、私たちが裏側から登ってきたのだ。ガイド付きの登山客が、私たちの苦闘を見学していたとは。立山高原バスルート、雷鳥沢ヒュッテなどが眼下に広がる。台形の形の立山、その奥に薬師岳、縦走コースと説明を受ける。それは、昨年の夏に登ろうかと考えたコース。今年の夏、逆から奥大日岳を見るのもおもしろいかもしれない。

飛び込んだ場所は、奥大日岳の頂点ではなかった。稜線からの大パノラマを楽しみながら登る。頂上で飛び込んだ雪庇をバックに、記念写真を撮ってもらう。楽しかったのはここまで。リーダーの大日岳は越えるの言葉に、そこまでは頑張らなければと思う。雷鳥に出会う。まだ、大半が白い毛だ。大日小屋は掘り出しの作業中、7月開業だが、こうすることで雪解けが早まるという。大日岳を越えると、ガスで真っ白になった。地図にコンパスを合わせていたが不安。喧々諤々となるも、ガスが晴れ、現在位置を確認。山ノ神尾根の分岐まで下るという。すでに、登り始めから、10時間は超え、足は鉛のように重い。テント場につくと、ザックに座り込む。寒気もしてくる。皆が心配してくれるも、明日の下山は歩けるか不安で一杯だった。

4日目も快晴。山ノ神尾根は地形が難しいことから、コット谷をめざし、下山することになる。早乙女岳からの下りは分からず、打ち出した地図もまったく足りなかった。左に大きくせり出した尾根を下り、右に回り込みコット谷へ入る。さらに、渡渉し、小又川に入る。左に林道が見えるも大きく崩れている。議論の末、川を下るも、雪はなく堰堤に行先を阻まれる。林道を人が歩いている。渡渉し林道に入る。長い林道歩きだが、フキノトウ、ショウジョウバカマ、イチゲが目を楽しませてくれる。リーダーが雪の残る谷筋を下るという。大きくショートカットできる。あっという間に橋近くの駐車場につく。ここからリーダーとHさんは馬場島の駐車場まで車を取りに行くという。ありがたいの一言に尽きる。

 2日目、クズバ山を越え、西大谷山(ニシオオタンヤマ)を目指す。雪の状態は悪く、雪庇、ひび割れ、穴とあり、どこを登るのか?トップを行くメンバーの議論を聞き、勉強させていただく。剱岳は益々迫り、早月小屋が見えるといわれるも、よく分からなかった。1885mで大きく左に曲がり、尾根沿いに登ると、奥大日岳の稜線が見えてきた。大きな雪庇だ。どのようにして超えるというのか?2010mあたりで良いテント場があるが、リーダーがあと400m登るという。しかし、粉雪が舞い始めた。ラジオで天気状況を確認。荒れることが予測され、稜線近くではテントが持たないとして、ここがテント場となる。

夕食は春キャベツ1個と玉葱、しめじなどたくさんの野菜の炒めもの、ベーコンとコンソメで、野菜のうま味を引き出す。ご飯は大宮労山一番の飯炊き、Hさんが担当。重い野菜を運んでくれたメンバーに感謝しつつ、夕食作りを担当させていただく。軟弱な私だが、何か一つだけでも、役だつことができればと思う。それがパーティを組むということではないかと私は思う。

 3日目、天気は良い。長い登りが始まる。テント場予定だった平らな尾根に届く。やがて、雪壁になる。ピッケルを突き刺し、アイゼンを蹴り込む。突然、リーダーから、サブリーダーに横一列に立てる場を整備しろと声が飛ぶ。サブロープで皆の確保が済むと、リーダーが、氷の壁を登る。サブリーダーが下で確保するも怖い。遭難事故でも起きたのだろうか。先ほどから、立山方面をヘリコブターが旋回している。やがて、雪庇を削り、稜線へ飛び込む。リーダーが飛んでガッツポーズ。一斉に拍手。目が点の私もつられて拍手をするも、自分もこれを登ると思うと、拍手もトーンダウン。自分の番が来た。クライミング塩田の新米塾生、先生の「足で登れ」の教えを胸にアイスクライミングに初挑戦。ステップは切ってある。何とか登れそうだと思うが、ピッケルがうまく刺さらない。よほど心配なのか、ザイルはガンガンに張ってある。やっとの思いで稜線に転がり込む。そこには、春山を楽を楽しむ大勢の人たち。状況が分からず、今度は頭が白くなる。

そこは、地元の人たちの山菜取り場だった。こごみを取りに来たとのこと。

カタクリも一面に咲く。葉はおひたしにして食べるとか。ご主人が、こごみをたくさん袋に入れ、「癖がなく美味しいよ、食べてごらん」といいながら、袋を奥さんに手渡す。「私たちはさっと湯がいてマヨネーズをかけるのよ」と言いながら、こごみをくださった。待っている間、私が、渡渉後、靴の中が濡れたというと、防水機能がない欠陥商品といわれる。バリゴの高度計も狂って使えない。厳冬期用の靴も買い直せといわれるも、来年も、また、挑戦できるのだろうか。 (Tu.T記)