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リベンジの大日岳

山行実施日;5月2日〜6日
参加メンバー;Hi.T、Sa.H、Ky.T、To.U、Mi.K、Tu.T、Yo.T、Sa.H

5月2日21時大宮を出発。関越道・上信越道・北陸道をひたすら走り、馬場島へと向かう。途中小雨がパラつく空模様、でも連休後半のお天気は問題ないはずだ。深夜に馬場島駐車場に到着。すでにいっぱいの車とテントで混んでいる。昨年以上だ。私達もすぐテントを張り仮眠するが、次から次に入ってくる車の音と人の声でほとんど眠れないまま朝になった。

5月3日朝、お天気は申し分なし。身仕度を整え荷物をまとめ出発する。昨年と違って馬場島より少し戻って中山への夏道を上る。中山までは地元の人達が日帰り仕度で大勢登って行く。中には長靴の人もいた。特殊な靴底と中敷が入っているらしい。私達の大きなザックを見て、どこまで行くのか、どこから来たのかと聞いてくれた。淡いピンクや濃いピンク、白の岩カガミがあちこちに群生していてとてもきれいだ。

途中から雪道になり、気温も高く春の雪はザクザクで歩きにくい。ゆっくりのペースで進んでいるのだが、私はすでにヘトヘトだ。荷がやけに重く感じて足がつりそうになる。年のせいか昨夜の寝不足のせいか、つくづく体力の衰えを感じる。この先の長い日程を思うと大丈夫だろうかと不安になる。薬をもらい足にすり込んだり、サプリをもらい飲んだり、なんとかかんとか一日目のテン場に着いた。昨年より下だという。風も無く静かな夜。富山湾の街の明かりがきれいだ。3時起き、5時行動開始の指示を受けて眠りにつく。

5月4日朝、薄明りの中でテント撤収。荷物をまとめ出発。今日は私は泣きを入れて共同食の荷を少し減らしてもらった。申し訳ない。前方にはこんもりと雪を被ったクズバ山への細い尾根がのびている。昨年は雨にたたられ、この尾根の不安定な雪の状態を見て撤退した事を思い出す。陽が上がると足元の雪はすぐにザクザクになり時々深く踏み抜くので気が抜けない。割れ目を避けて大きく雪面をトラバースしたり、枝をかき分けながら樹林帯に入ったりを何度も繰り返し、ようやくクズバ山の頂上に立った。左前方には一昨年登った剣岳が大きい。小窓尾根、剣岳、早月尾根、ぐるっと長いコースが一望出来る。半ベソをかきながらなんとかやりとげた事がなつかしい。クズバ山からは割合ゆるやかな尾根伝いにアップダウンの繰り返しで西大谷山へ。ここまで来ると奥大日岳がぐんと近くに迫ってくる。見上げれば真白な広く長い急斜面と真下の雪壁、そこへ覆い被さる雪庇が両手を大きく広げて立ちはだかっている様な感じがする。あの雪庇をどうやって切り崩して上るのか想像もつかないが、とにかく尾根の真下まで進むことにする。見えているのになかなか届かない、そんな感じがするなだらかな地形で少々疲れも出てきた頃、小雪が舞い出した。風よけにもちょうど良い場所、二日目のテン場とする。雪は降ったりやんだりで外はすっかりガスって真白な世界になる。明日の最大の核心部となる雪庇の通過をあれこれと想像しながら眠りにつく。

5月6日、いよいよ長かった山行も今日で終わる。荷も軽くなったがこの先危険な箇所がないと思うと気分も軽い。ザクザクの雪でもなだらかな斜面ではリズム良く足が運べる。やがて剣岳の真上に陽が上り始めた。まさにダイヤモンド剣だ。美しい姿が見られた。四日間頑張ったご褒美だ。コット谷の下りは長くて飽き飽きしたが、ようやく中州を抜けて林道へ出る。所々崩壊していたり雪で塞がれていたりしたが、ようやく馬場島へ通じる道へ出た。リーダーとSさんが駐車場まで車を取りに行ってくれる。私達はのんびりと休ませてもらった。感謝です。その後入浴・食事・帰路に着く。

昨年は雨にたたられ途中撤退した大日岳、今回は最高のお天気に恵まれ登頂することが出来て本当に嬉しかったです。体力の衰えを感じつつ、皆さんに助けられてリベンジの大日岳です。ありがとうございました。
        (To.U記)

 垂直の壁は一部氷になっている所もある。そしていよいよ雪庇の真下、ハングしている雪の塊にピッケルを打ち付けて切り崩す。その度に真白に雪を被る。それでも何度も何度も繰り返し、ようやく1mほどの隙間を作り、無理矢理によじ登った。ころがり上った感じだ。そして立ち上がって片手を突き上げた時、じっと下から見守っていた私達からオーッと歓声が上がった。感動の瞬間だ。いよいよ次は私達の番。簡易ハーネスにエイト結びでザイルをつける。アイスクライミングの経験のない私は、ピッケルの打ち込み方もいまいちで、氷になっている壁には苦労する。アイゼンの前爪での立ち込みはブルブルする程負担がかかる。時間がかかっていては手も足ももたない感じだ。気合を入れ掛け声を掛けて一歩ずつ上る。最後は確保というより引っぱり上げてもらい、どうにかころがり上った時にはハーハーゼーゼーしばらく動けなかった。その後も順番に上り荷物も引き上げて全員無事に奥大日岳に登頂することが出来た。

暫し緊張から解き放されて展望を楽しんだ。暑い位の晴天で見晴らしは最高だ。人も多い。ビックリする程だ。意外な場所から上ってくる私達に珍しそうにのぞきに来る人達もいる。あの雪の壁の立山道路が黒くくねくねと続いているのが見える。いつまでも眺めていたい気分だが出発する。暫くは人混みという感じだがすぐに静かになる。踏み跡はあるが大日岳に向かう人はほとんどいない。ザクザクに融けた雪に足を取られない様気を使いながらの長い下り。そして40p程の巾しかない雪稜ではピッケルもきかない位雪が弱く、一歩一歩足跡をたどる。大日岳に着いた時にはやっと緊張の糸が解けた様で心からホッとした。

ここからは早乙女岳に向かうのだが、尾根が広く支尾根も広がっているので間違いやすい。あいにくガスがかかって解りにくい状況になった。何度もGPS・地図・コンパスを比べる。あまり動き回らぬうちにテントにしてはという意見も出始めた頃、スゥッと霧が晴れて陽が差し見通しもきいて方角がはっきりした。再び進む。なだらかな地形を一つ一つ確認しながら目安となる山の神尾根を確認した所で三日目のテン場とする。今日は朝から緊張する場面も多く行動時間も長くきつい一日だった。でも明日はもうコット谷を下るだけだと思うとずいぶんと気が楽になる。明日の起床・行動は1時間遅れで良しとの指示を受けて眠りにつく。

5月5日、朝から奥大日岳への急斜面の長い登りが始まった。左手で雪をつかみ、右手のピッケルを確実に差し込み、一歩一歩アイゼンの足を蹴り込む。長い列が続く。四つん這いの姿勢がずうっと続く。後ろを見るのも上を見上げるのも、バランスを崩しそうで、ひたすら足元にだけ集中する。そんな中、さかんにヘリコプターのエンジン音。そろりと視線を移すと雷鳥沢の方面で何度も旋回を繰り返す機体が見えた。明らかに捜索活動と解る動き。いやな気分だ。下山後、入浴した際に見た新聞で滑落事故の捜索だったことを知る。

四つん這いの姿勢のまま肘を膝に押し当て少しでも腰を伸ばし休みを取る。途中何度もこんなことを繰り返しながらようやく奥大日岳直下25m地点に。今度は横一列に向きを変え、幅広く足元を踏み棚を作る。横に張った補助ザイルに各自確保を取り待機する。

いよいよリーダーが奥大日岳の雪庇に挑戦するのだ。両手にバイルとピッケル、腰にアイスバーを付け、皆が固唾を飲んで見守る中進んでいく。確保のザイルはHさんがしっかりと握っている。バイルを打ち付けアイゼンを力強く蹴り込む。