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入道沢・八海山新開道(越後)

     たび重なる滑落に身も心も憔悴

次には深い薮の中に突っ込む、手前に見え隠れしていた登山道は近づいて来ているはずなのに、果てし無く遠方に見えてくる。

薮の中をトラバース中に足を滑らし宙吊りとなるが、HiTのアシストで復帰する。

入道岳方面に進むがタイムオーバ、薮の中でビバークする事になる。水が無い。水を分配するが心もとない。行動食は有るが、水が少ないので食べる気がしない。

タ―プを張るが強風に暴れている。沢靴は昨日から履き続けているがサンダルでは心もとなく履き続ける事に。

雲行きが怪しい、雨が降ったら身動きが取れなくなる。晴れていてもあれだけ薮で滑ったからまともに登れない。これで雨でも降ったらやばいな!

身体とザックを薮に固定し休む段取りを行なう。ザックに頭を置き寝るが傾斜がきつく寝られない。ザックを下にし足を乗せて寝るがハーネスが身体に食い込んで激痛を覚える。

懸垂下降の指導をAから受けるが、懸垂下降器を使用しての下降はこれが初めてだった。

藤坂ではハーネスに直接8の字で固定して、5m程度の懸垂しか経験がない。懸垂下降は約20m程度か。「上流側に曲がりながら下降して、下流川だとまた滝に逆戻りだよ!」。ゆっくり下降するが握力もなく長い時間に感じる。上流側に下降するが、どうしても下流側に体が持って行かれる。下からSが「そのまま真直ぐで大丈夫」。やっとの事で下降しホットすると、前方には大きな雪渓が控えている。

 雪渓の冷気が心地よい。「雪渓は氷の塊、落ちたら潰されるよ!また爆風が凄いから気をつけて」この先をSが偵察に行ったが適当な場所が無く、今日はここの左岸側でビバークとなる。

岩場で落石が心配だが場所がない、直ぐにビバークの準備。法面上部には4〜5人寝れそうな平坦場所があり、女性用に確保する。男性陣は下段の岩の間にタ―プを張り傾斜した岩の上にビバークを行なう。

薪を集め焚き火の準備から宴会へと進む。アルコールが無くなりやがて寝床へ。指圧付きベッドは傾斜がきつくビレイを確保しながら寝る事に。

強めの指圧でなかなか寝付けない。おまけに風が岩をゴロゴロと落として来るので、ヘルメットを外せない。

4日目】平成24917日(月曜日)晴れ
 身体が痛く寝付けない!まだ2時、…3時みんなは寝静まっている。4時になっても起きそうにない、疲れているのだろう。起こすのは4時半ごろにする、それまで横になり、もういいだろうとトイレに立つ。

焚き火の勢いが弱まり、薪を追加するが焚き火の周りに寝ている2人は動こうとしない。5時前ごろ、皆がもそもそ動き出す。
雪渓のクラックが大きくなっているようだ。昨日偵察したSによると、雪渓が続き幅の細い雪渓部分があるので杖となる木を各自調達するよう指示が出る。左岸側のガレた法面を登り雪渓との隙間1m程度をまたぎ雪渓に乗り移る。

 雪渓は硬く凍結しストックなどでは食い込まない。滑らないようにスプーンカットの頂部を注意しながら進む。傾斜は大したことはないようだが、滑り出すと止まるのか心配。

山行実施日;Hi.T、Ma.A、Ry.K、Ky.T、To.U、SaH、Se.O、Sh.S、Ru.T、Sa.H
参加メンバー;9月14日〜18日

標高:入渓460 登山道取付:1610 下山口:480
累積時間:33時間55分  直線距離:12.03Km 沿面距離:19.25m 平均速度:0.57Km/h 

1日目】大宮21:00−東松山IC−小出IC−ゆのたに道の駅    仮眠

2日目】道の駅4:50/6:00−国道352−銀山平温泉−国道352291214−
     広堀河原
P 8:00/9:00・・・P790ビバーク12:35                     6時間35

3日目】P790 4:00/6:45・・・2段の滝8:00/10:10・・・P1180ビバーク16:25         9時間40

4日目】P1180 4:50/6:40・・・雪渓の廊下・・・P1575ビバーク18:00          11時間20

5日目】P1575 5:00/5:40・・・新開道登山道P1620 7:40/8:10・・・P480 12:00      6時間20

温泉:「湯らりあ」温泉400円 透明 室内*1 水風呂*1 サウナ(別料金)

昼食:「釜めし米太郎」 三国街道(17号)塩沢石打IC手前

「この沢は、距離が短いから3級なんだ。荷物を持たずに日帰りする沢」。3級がどの程度のものか私には解らないが、今回の事で沢登りのセンスが無いのが解った。

振り返ると八海山が綺麗に俯瞰できる。紅葉だと綺麗だろうな。水場に着くが「だめだ!枯れてる。」落胆が激しい。頭が縛られているように感じる。下山途中に伏流水らしき水を調達すると頭の痛みも軽減する。

なんとか登山口に到達、登山口にある沢水をむさぼり飲む。「うまい」!やっと沢靴から解放されるが、足はふやけにふやけ土ふまずに皺がより豆が出来ている。

車を走らせ自販機のジュースを煽る。温泉につかり「アー・ウー」と奇声が発せられる、みんな傷が沁みるようだ。昼食をとり帰途に就く。

下山1週間後、左足の膝下に痛みが出て医者に行くと、膝下の傷からばい菌が入り化膿したとの事。ズボンの中で傷に気付かず放置したためである。(Ry.K記)

昨日は岩の上であり、滑り落ちる事はなかったが、この傾斜では固定しないと滑り落ちる。皆どうしているのか?

身体をずり上げて食い込みを緩和するが直ぐに元に戻る。解放したい衝動に駆られるが、気の赴くままにすると世の中に復帰出来そうにない。

ザックの中身を全て出し両足をザックに突っ込む、ザックにテンションを掛けるようスリングの長さを調節しハーネスの食い込みを抑制した。やっとの事で眠りに落ちる。

【5日目】平成24918日(火曜日)晴れ 
 目が覚めると晴れていた、4日も続けて晴れるとは運がいい!行動食は水が心もとないのでパスし、水を口に含ませ喉を潤すだけにする。

大日岳の南西側に向かう。傾斜が強く薮と樹木に足を取られ滑って上がれない。お助けロープをもらうが、数回滑り落ちて上に登れない。皆の助けを借りて登るが、すでに体力がなくなる。登山道まで50m程度のトラバース、滑る滑る。天気に助けられやっと登山道に付くが水が無い。あとはゆっくりと下山する。

【1日目】平成24914日(金曜日)晴れ
 恋ノ岐へと向かう途中、「道の駅」で深夜の入山祝いが盛大に執り行われる。一升瓶を2本抱え、ビールなど飲み止みそうにない。もう今日から入渓するのに飲みすぎだよな。私は今回で2回目の沢でありアルコールは控えめにし早めに就寝する。4時起き?起きられるのか?

2日目】平成24915日(土曜日)晴れ
 やはり寝坊、予定時間を40分ほど過ぎての起床。二日酔い気味での出発となる。銀山平温泉で林道にゲートが設けられている。土砂崩壊のため通行禁止。緊急打ち合わせにて入道沢に決定。車3台で広掘川河原駐車場に向かう、途中間違った道を進むがこちらの林道も通行止め。

3日目】平成24916日(日曜日)晴れ 
 ビバーク地点から少し下り、入道沢に戻る。ここからは岩場となり、小滝が連続する。
南方面には巻機山も遠望が利く。「雪渓だ」正面には雪渓が残り、沢は東方向に屈曲し2段の滝が現れる。初めの滝は右岸側を登攀するが、次の滝はロープを固定使用し順次登攀する。右岸側の法面から登攀し、途中から沢寄りにトラバースし直登するがトラバースが上手く出来ずに振られ皆のため息を誘う。ここを抜けると3〜6m程度の滝が連続する。数か所ザックだけを引き上げ、空身で登攀をする時もある。ザックを上げる時HiTが、次「Kさん上がってザックを引き上げて」。水を含んだザックの重い事、10本もザックを上げると手に豆も出来てくる。おまけに握力が無くなる。
 下から見上げて左に屈曲した3段の滝が現れる、初めの滝は4m程度で深そうな釜がある。
KyTが先に進む、左岸側から取付くが直ぐに滑落釜に落ちる。沈み具合から2m程度はありそうな釜だ。数回繰り返しクリアーして行く。私の番、最初の滝をやっと登ると2m程度のナメがある。ここも左岸から登るが、右岸側に移動する時に足を滑らせナメの流れに呑まれ、ぬれ鼠!幸い下段までは滑落しないで止まる事が出来た。息を整え今度は右岸側から取付く、上部の滝は2m程度でSがお助けロープを出している、攀じ登りホットすると目の前には10m程度の滝と雪渓が覆いかぶさってくる。またか!Sが偵察に行くと、古木を利用して登れない事もないが!

 HiTが上がって前方を見ると。「アリャ!」とため息交じりのあきれ顔。ここは高巻きする事に決定。右岸の法面を登攀し、懸垂下降で沢に戻る。法面は草付きでおまけに非常に脆弱なガレ場。滑ってて登りにくい!途中で沢側に滑落する、再チャレンジを行ない中間地点まで登ると大岩で進退きわまる。どうするか、足場がない!左右を確認して上体を岩に預けて攀じ登るが、滑る!握力が戻らない、なんとか登攀するがここから下降地点まではさらに滑って一苦労であった。

右岸側に下りる事に。4m程度下降し右岸法面をカニの横歩きで10m程度トラバース。

ここから3m程度下降し雪渓の中に入る、長い雪渓の下を足早に通過し雪渓を抜ける。(PS雪渓の下にはGPSの電波が利かないのか記録されていないことが下山後判明。)

この辺より枯れ沢になるが、登攀場所はまだまだ続く。左岸側の岩場を登攀する、下から見ていると足がかりは有りそうだが皆苦労している、「滑るのかな」特に最後の登りに四苦八苦、Sも残置されていたお助けロープで登ったようだ。左足を大岩の手前に乗せて登るが、登攀中ブースカブースカ文句を言っていた者たちが登りきると、「ヤッホー」の歓声が上がる。

私は股関節が硬く左足が上に上がらない、なんとか引っ張り上げてもらう。ここからの景色はすばらしく確かに歓声を上げたくなるだろう。ただ山頂方面を俯瞰すると三方が急斜面に閉ざされた岩場はまだまだ続き、正面には大日岳の岩峰が覆いかぶさるようにそびえている。

進むうち左岸側の法面から落石が起き脆弱な法面である事が伺える。さらに数十メートル進むと、左右とも切れ落ちた狭隘な雪渓の橋が出現する。一番狭隘な部分は幅50cm程度で長さ3mぐらい。基部は1m程度で全長20m程度の雪渓の橋である。

一人ずつ順次渡って行き私の番に。足元を注視しての歩行、周りを見渡す余裕がない。一番狭隘な部分を進んでいると「ガラガラガラ―」と大きな音響とともに女性の悲鳴が聞こえる。 足元の注視を続けなければ滑落しそうであり、気にはなるが前方を確認できない。やっと橋を渡りきり前方を確認すると、誰も怪我がなく安堵する。落石は、雪渓から左岸の法面を登攀中に発生したものだ。わざわざ危険な法面に迂回するのか?これは雪渓の前方が大きな口を開け直進する事が出来ないためである。

脆弱なガレ場で足を乗せるとずるずるとズリ落ちてくる。まるで砂地獄のようだ。3m程度登りトラバースする、途中盛り上がり部分を跨ぐ事になるが。足の置き場所が無い、全て崩壊しそうだ。「その岩の上に乗って」「穴が空いているよ」「穴に岩が挟まっている」「みんな乗ったから!」そう言つても体重が違うし、繰り返し乗っているから同じ状態ではないよな!

トラバース後再度雪渓に乗り移る。上流からは進めそうもなく、左岸法面に残った雪渓のウイングからSが様子を確認するNG

 逆に通行できると間違った道に入りこむ所であった。早めにメインルートに戻る。駐車場はさらに奥と思われるが路肩に駐車する。日が射して暑い、準備中に汗が流れる。たまらず川へ、のどかな陽気に和気あいあい水風呂としゃれこむ御仁も。

入渓時間が遅いのでタ―プ設営場所を探す、入道沢を右に少し上がった所、右岸側の高台に草ベットをしつらえタ―プを張る、焚き火を熾し宴会の準備。盛大な宴会にボルテージが上がる。夜間に雷雨がし出したが、雷鳴は離れて聞こえる。

左岸側は、すでに水が枯れた三段のナメ滝が控えている。右岸側の法面をトラバース気味に登攀する事になる。先行者が登攀すると浮石なのか激しい落石が続き脆弱な岩場と伺える。SARTと登攀しロープを確保すると、そのあとにOKyTUKSaHと続く。

末端のロープ確保にSH、小壇の上にKSaHおよびアシストとしてHTが、中間固定部分にKyTUが待機している状態で、Oが中間部分を通過し正面の岩場を登攀する時に枯れ滝方面に3m程度滑落する、体制を立て直し上がり出すがさらに滑落し枯れ釜に止まる。登ろうとするがさらにここから滑落する。Aが助けに向かい空身で登らせるが登れず、しばし枯れ釜で休ませる事に。

後続のKyTOと同じコースに進み苦労している。Uは直登コースに進み無事登攀する。私の番、直登コースに向かう。Oの体重を数回耐えたハーケンだが私が滑落しても抜けないだろうか?あれだけストレスを与えたからなと、心配しながらなんとか登攀する。

水のないゴルジュを登攀する。Hのアシスト中に落石が発生、運悪くHの左手に直撃を受け負傷する。

抜けるような青空に衝きあげた大日岳がそびえる、手前にはさらに狭隘となったゴルジュを登攀するが、最初は手足をフルに使いやがて背中を押しつけながらの登攀となる。

入道沢遡行記録