佐梨川大チョーナ沢
これぞ越後の沢だ
山行実施日;08.14-18
参加メンバー;Sh.S、Hi.T、G2
今回はメンバーの都合で、黒又川北又谷は変更となり、越後の銅倉沢。さらに雨が予想されるときには大チョーナ沢ということになった。今年は暑い夏となり、台風が発生しても本州には寄せ付けないが、お盆の頃に寒気が入ってきて不安定となった。結局、前日に大チョーナ沢に変更となる。大チョーナ沢は10年以上前に行っているが、すっかり忘れていた。しかも、変更に次ぐ変更で下準備も不十分だったのが、今になって悔しさがこみ上げる。その悔しさをあのときも味わったことを、今更ながら思い出し噛みしめている。ルート選びや登坂力で遡行時間が大きく左右されるからだ。自分の力量が試される沢である。
8月14日(火)
今年は雪が多かったし、お盆の山行となったので、雪渓が多いだろうと予想しながら西大宮駅に向かうと、若い2人がうれしそうに手を振っていた。さっさとザックを荷台に詰め込んで出発だ。関越でまっすぐ小出ICへ。交通量が少ないのだろう。高速から一般道に出るところには信号機もなく右折をする。さらに突き当たりを左折するとすぐに道の駅「湯の谷」につく。反対側にコンビニがあり、冷えたビールを調達した。辺りでは集落ごとに夏祭りの太鼓の音が響いている。軽く入山祝いをしていると、ときどき駐車場に入ってくる車があった。
8月15日(水)
パンを食べながらザックを車に押し込んで湯ノ谷に向かう。空は気持ちよく晴れて暑い。湯ノ小屋を過ぎ林道を進む。越後駒ヶ岳に伸びていく険しい県界尾根が広がってくる。反対側が水無川のオツルミズ沢だ。決して左岸には逃げられないというより、挑戦的な衝立となって立ちはだかっているようだ。大チョーナ沢出合を越えてすぐに橋を渡った。その橋で下ろしてもらい、Tさんが越後駒ヶ岳の登山口まで車を置きに行ってくれた。その間に偵察。橋から踏み跡をたどっていくと大チョーナ沢の出合に出られた。静かな出合でその奥に数々の滝が控えているとは思えない様相だが。河原から橋にいる2人に手を振っているとアブが集まってきて歓迎をしてくれ、すぐに橋にもどった。Tさんが戻ってきて出発だ。はじめの滝には釣り師のものだと思えるフィックスロープが下がっていた。途中の釜で竿を出してみるが、全く当たりはない。魚の姿も見られない。一応、雨も予想させるので2泊3日の予定にし、気持ち的には余裕があり、ゆっくり進む。20m曲がり滝はまさにウォーター滑り台だ。左から巻くと岩峰の間に出て怪しげな根っこを支点に懸垂をする。ちょうど10m。中間の草つきバンドは嫌らしく外形している。さらに、嫌らしい草つきをトラバースし、再び10mの懸垂をして沢床に戻った。そこで小休止だ。私はすぐに竿を出して試してみる。
すでに時間が17時半となり、ルンゼから稜線を目指す。前回の山行と同じだ。やらしいルンゼを詰める。ちょっと安定したところで、携帯の電波が届く。連絡を取っていると、もう少しで藪に入れるところだったが、暗くなって進めなくなる。しかたなく、ガレをバイルで削って座れるぐらいに幕場とした。食料の非常食を確認し、途中で汲んできた雨水でしのぐ。夜はそれぞれの行動食とし、次の日に、芝ちゃんの持ってきたアルファー米3つと私の1つを食べることにする。湯ノ谷辺りから打ち上げ花火が上がって、寝ながらの花火見物となる。お湯を一杯飲んで、ツェルトを被り横になる。すると、雨が降り出す。ツェルトから染み込む雨が冷たい。その雨が止むと、うとうとした長い夜を過ごした。
8月18日(土)
ときどき起きて空を見ると、星が出ていて晴れていたが、明け方は雲が多く、太陽が昇るころは、黒い雲の間から朝焼けの赤い光が覗いていた。お湯を沸かし、ジフィーズを食べて出発だ。
1泊の予定では竿を出す余裕もないところだが。次の滝の下に竿を出すと、35cm,32cmの岩魚がかかった。岩魚を体の後ろに隠してみんなの休んでいるところに戻ったが、久しぶりの尺岩魚に笑顔が隠せなかった。真吾沢を過ぎたところは、「ここに泊まってください」と言っているような河原があり、時間的には早いが、今日の幕場にした。たしかに、それ以降はゴルジュとなる。天気の崩れはなさそうなので、焚火を熾し、岩魚の刺身や味噌焼き、平らな石を焚火に入れて、広島のおみやげである牡蠣を焼いて舌鼓を打った。途中で軽く雨が降ったがすぐに止み、夜は星空となって天の川も見ることができた。
8月16日(木)
明け方もよく晴れていて、星空が広がり、その中に火星が大きく赤い光を放っていた。いよいよここからが本番だ。8m滝、12m滝を左から右からと巻いていく。次の10m滝は左脇からザイルを引き、効かないハーケンを支点にしながら灌木でビレイをして抜けた。右から枝沢が入ってくる。
日程;
8/14(火);18:00西大宮駅-関越道小出IC-湯ノ谷道の駅20:30BP
8/15(水); 6:30BP-6:50湯ノ小屋-7:06/8:06橋〜8:20大チョーナ沢出合入渓
〜9:17 6m2条滝〜11:30 20m曲がり滝13:10〜14:00真吾沢上BP
8/16(木); 6:50BP〜13:15小倉沢出合の次の6m滝(大高巻き)15:15〜18:00幕場BP
8/17(金); 6:15BP〜7:15右俣〜14:0040m3段滝上〜大雪渓・40m滝で雷雨〜
14:50/17:20脇のガレ〜19:00その脇のルンゼ上BP
8/18(土); 6:30BP〜8:30/9:00 1700m付近の稜線朝日岳〜13:00駒ノ湯〜湯テルメ
−浦佐駅経由−関越六日町IC−西大宮駅
次の5m滝は中ちゃんが水線突破をしてお助け紐ですばやく登った。大木で堰止められた小ダムを越え、8m2段の滝を左から、次の6m滝も左から巻いて懸垂で下りた。8m2段滝は1枚ハーケンを打って上がり、落ち口に飛び移りで越えた。その先は雪渓のブロックを残した小倉沢の出合である。2段50m滝を落とす小倉谷を右折するように曲がる。次の6m滝では手前に戻って右から巻くとドンドン追い上げられる。結局大高巻きとなった。途中でトラバースができたであろう場所を見逃してしまった。ようやく、下降して沢床に戻ったときは17時を回っていた。2つ滝を越えたところにそれぞれわずかな河原があった。高巻きの時には広い河原に見えたが、下りてみるとわずかだ。そこを幕場としたが増水をすればあっという間に流されそうなので、両岸の高台を偵察しなんとか逃げられそうか確認をした。流木はたくさんあり、焚火に火がついたところで雨が降り出した。それでも、豪雨になることもなく、芝ちゃんのカレーを食べる頃には星空が広がった。
8月17日(金)
雲は出ているが今日も天気はもちそうだ。滝を一つ巻くと、雪渓が長く詰まった右俣に出合う。奥には滝が構え寄せ付けようとしない感じだ。一つひとつの滝がしっかりとしていて、安易には越えられない。焦ってはダメだと、あらためて、きちんと向かい合って一つずつこなして行かなくてはと自分に言い聞かせる。15m2段滝を左から巻きハング気味の落ち口に出て行くが、落ち口がちょっと悪かった。先端にトラバースするときに、芝ちゃんが枝と掴んだものの足を滑らせて一段下に落ちて止まる。なかなかのトライだが、ひやりとする。
泥壁を削って横になったので、ザックやその他いろいろな物が泥だらけである。それでも谷に落ちていった物はなかったようだ。藪に入って枝尾根を辿る。初めはシャクナゲだったが、後は根曲がり竹をかき分けて稜線に出る。左に一般登山者の声がして、我々を見つけると、珍しい物を見つけたかのように写真を撮っていた。登山道に飛び出たところは、1700m付近の百草ノ池よりも上であった。登山道に出ると青空で陽ざしが厳しかったが、みんなの顔には稜線に出られた喜びがあふれていた。後は長いが山を下るだけだ。といっても太陽に照らされかなり疲れた。汗びっしょりで湯ノ小屋で飲んだ飲料水が体にしみて美味しかった。すると、元気が出た芝ちゃんは、「今晩、地元のお祭りで太鼓を叩くんだ!」と、浦佐駅で新幹線に飛び乗り一足先に帰って行った。若いというのは、たいしたものである。まだまだ余裕があるようで、これからが楽しみだ。
それにしても、大チョーナ沢は、終わった後からいろいろ考えさせられ、可能性を秘めた悩ましくもあり魅力的な沢である。あらためて、大チョーナ沢に乾杯。 (Sh.S記)