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 日本山岳標高百位を登り始めて気づいた一つに「大沢岳」がある。20年前に三伏峠から入山して塩見岳を皮切りに南下して光岳まで縦走したことがある。当然そのときに大沢岳を登ったはずと思っていた。が、台風で停滞した事や、疲れていた事などで、百間洞下降点から大沢岳へ登らずに中盛丸山、兎岳、聖岳へと縦走を続けてしまった。

 今回山岳標高百位で残っている最後の山「大沢岳」を登り、その後に奥茶臼山を登るために大沢渡経由で「しらびそ峠」へ抜ける事で計画を立てる。但、南アルプス南部への交通の便が悪く、南アルプス公園線および三ツ峰落合線が通行止めで、「まいたび」の夜行バスで27号線を使用して井川ダム、畑薙ダムへと入山した。早朝、送迎バスで椹島へ入り赤石小屋への急登をじわじわと登る。夜行バスでの寝不足、久しぶりの重いザックで、ピッチが上がらない。さらに樹林帯にもかかわらず暑くて汗が流れる。小屋の少し手前辺りで足がピクピクし始める。やっとの思いで小屋着、テントを設営して小屋前でビールを飲み始める。汗でぐっしょり濡れた衣服も乾いてしまった。夕暮れのガスの中に明日登る赤石岳が望める。

 二日目も良い天気であける。富士見平で展望が一気に開けて千枚、荒川、赤石、聖岳、遠くに富士山が望める。一息入れる。トラバース気味に進み北沢に出ると目の前に赤石岳稜線への急な登りが待っている。重いザックが少々辛いがじっくりと登る。お花畑を過ぎるとしばらくして稜線に出る。小赤石岳への道を右に見て赤石岳への登りにかかる。ほとんどの人が荒川、千枚岳周遊なのでザックをデポして登っている。赤石岳山頂からの眺めは抜群、これから行く百間平、大沢岳、中盛丸山、兎岳も望める。すぐ下の避難小屋も新しくなっていた。しばし休憩の後、百間平へ向けて急なガラ場を下る。下りきって伸びやかな百間平、ザックは重く暑い日差しだが高原の風が気持ちよい(でもザックが重くて汗を流しながら歩く)。百間洞への下りも急で膝が笑う。明日登る大沢岳が目の前に大きく聳える。お昼前に百間洞のテント場に到着する。ビールと飲み昼寝(少々暑かったが)をする。

 三日目、今回の最大移動日。4時半に出発した。稜線まで約1時間のトラバース気味の登りで百間洞下降点。20年振りに訪れたが記憶にない。左に聖岳への縦走路を見送り大沢岳へ向かう。途中の大沢渡分岐にザックをデポして岩陵の道を山頂へ向かう。大沢岳山頂に6時到着する。二〇年来の宿題をやっと達成でき、日本山岳標高百位の完登ができた。

朝日に当たりながら記念写真、しばし展望を楽しむ。が、この先が長いので分岐点にとって返し早々に大沢渡へ向けて6時20分下り始める。この道は遠山林道の崩壊で今は通行禁止、登山道は廃道化しかけている、とのこと。標高差1800mを下る。好き者が居るらしく(自分もそうかな)赤テープが随所に下がっている。唐松峠7時40分、林道出合に8時50分に到着する。全身汗だく、ザックが重い。此処までは道を間違えることなく歩けた。一休み後、さらに下る。尾根を一つ間違えるが、地形図、コンパスで見直し修正し事なきを得る。この先大沢山荘(廃墟)までの道が??、何処を歩いても良いような処で、ある報告書にあったケーブル(電気?水道?)沿いに歩けば良いとのことに従って進む。大沢山荘に9時半着、一休み。

大沢渡へ向けてさらに急坂を下る。沢音が聞こえだし、遙か下にかなりの水量の北又沢が眺める。少し上流に流木が沢を橋のように堰き止めていて、水に入らずに渡れそうなので無理矢理に崖を下る。思い通り水に入らずに10時15分に沢を渡ることが出来た。が、林道への上り登り口が解らなくなってしまった。崖をトラバースしてまたもや無理矢理に尾根にとりつく。登り口の大沢渡は大沢が北又沢に合流するところで、今居る尾根を登れば林道に出られる。一休みして急な尾根を登り始める。ザレた尾根は非常に上りづらい。這いつくばるようにしながら立木を頼りに息も絶え絶えに上る。高度計を眺めながらあと***m、あと+++mと慰めながら進む。林道の標高約100m手前付近で登山道らしき踏み跡を発見してホッとする。ヨタヨタと登山道を忠実に上りやっと林道に13時に到着する。標高差約500mの上りを2時間半近くかかってしまった。徒渉をしてでも素直に大沢渡から登山道を上った方が良かったかと強く反省する。

 暑い中、林道にしばらく横たわっていた。思い直して歩き始める。この遠山林道は「しらびそ峠」に向けて緩やかに標高約300m上っている。林道はそこかしこで崖崩れが発生していて、大小の岩が転がっている。黒沢ではしっかり橋が流されていて簡易的に付けられているトラロープを頼りに川底まで下り、上り返す。汗が流れ息も切れる。暑い中で完全に脱水状態、沢の水がある毎にゴクゴク飲んでいた。やっとヨレヨレになりながら「しらびそ峠」に16時15分に到着した。百間洞から約12時間も歩いた長い一日だった。暑い車道をさらに上り 「ハイランドしらびそ」に到着。テント場にテントを張って、200円のお風呂に入りビールをいただいて、やっと生き返ったような気持ちになる。山岳標高百位を達成したことで、充実感に包まれながら夕食も食べずにそのまま寝てしまった。

 長い一日を歩いて体のあちこちが筋肉痛の状態で目が覚める。この後の朝日・化穴山への山行が決まっていて、奥茶臼山へ登ることをしばし迷う。此処まで来たのだからと痛む体にむち打って5時40分出発する。 「しらびそ峠」まで戻り登山道を上り始める。昨日の疲れがしっかり残っていてピッチが上がらない。特に暑い中を余り食事も摂らずに歩いたことが影響しているようだ。奥茶臼山まで標準タイムはテント場から約4時間半、アップダウンもあり疲れた体で約5時間40分もかかってしまった。帰りも標準時間をかなりオーバーしてテント場に着いたのは15時40分頃だった。往復で約10時間を要した。疲れた。

 下山の日、予約したタクシーでバス停まで下る。路線バスを乗り継いで飯田駅へ、すぐさま弁当とビールを仕入れて高速バスに乗る。後はいつものように飲んだくれてウタタ寝しながら帰る。お疲れ様でした。

大沢岳・日本山岳標高百位 完登

赤石岳

ヨレヨレの奥茶臼山

南ア・赤石岳〜大沢岳〜奥茶臼山

 二十年来の宿題をやっと達成   日本山岳標高百位の完登

山行実施日;7月25日〜30日
参加メンバー;Te.I