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北アルプス・大日岳/北尾根(富山県)冬山

     晴天の大日岳稜線と富山湾の遠望

ゴールデンウイーク後半の山行計画は、剱青少年研修センター/中山/クズバ山/奥大日岳/大日岳/県青少年研修センター縦走を、前日泊+2泊3日+予備日1日の予定である。

馬場島への林道「富山県道333剱岳公園線」は、429日の開通予定であるが今年は雪が多く予定どうり開通するか危ぶまれた。開通が遅れれば剱青少年研修センターからの林道歩きとなるが、林道は開通し馬場島まで車で移動する事ができた。

1日目】53日 雨・曇り
 テントを叩く音で目が覚める。馬場島の駐車場に早朝到着し仮眠を取っていた。外では他のチームの話声が聞こえるが、出かける様子がなさそうだ。初日から停滞か?暫く様子見のため再度シュラフに潜る。やっと雨が小降りとなり準備にかかる。警察に登山計画を提出して出発する。
 コースは「東小糸谷」から「クズバ山」経由に変更となる。林道の雪は溶け「フキノトウ」があちこちに芽を出している、やがて「立山川」の橋を左岸側に渡り「東小糸谷」に向かう。
 雪解けのため水量のふえた「東小糸谷」の右岸側で、雪の残っている法面をトラバースしながら登る。やがて左岸側に渡渉し中山の鞍部へ向かい小休止しクズバ山へ向う。天気は回復し青空のもと「早月尾根」や「猫又山」を望むが、まだ剱岳を見ることは出来ない。此処からの急登は夏道となり汗が絞り出される。滴り落ちた汗の先には「イワウチワ」「キクザキイチゲ」「ショウジョウバカマ」などが咲きだし目を楽しませてくれる。

温泉に入り昼食に向かう頃、風が強くなり山に暗雲が立ち込めるのが望める。あのまま突っ込んでいたら困難が予想される、撤退の判断はベストか。

       (Ry.K記)

雪稜を進む、直ぐに大きな雪庇が現われる。出来るだけ樹木側を拾って歩く、地山から雪庇を振り返ると大きく張り出しているのが分かる。
 すぐに激しい雨が降り出し雨具を着用するが、身体をたたく激しい雨に閉口する。ときたま残る雪は薄く斜面にやっとへばり着いているようだ。出来るだけ衝撃を与えないよう間隔を開けて注意深く登攀を繰返す。
 脆弱な雪面を避け藪の中を進む、尾根は狭く狩り払われた笹が短く残る、この笹竹を踏むと大きくバランスが崩される。また笹の茎に乗ると雨と傾斜に足元が滑り苦労する。
 尾根が途切れ斜面を少し迂回しながら通過するが、ザックを背負ったままでは狭隘な樹木の間を抜ける事が出来ない。ザックを一度斜面に預けて樹木の間を通過するが、ザックを背負い直すのに非常に不安定な場所で背負っているのを見るとかなり苦しそうである。体の固い私にはバランスが保持できそうに無い、さらに下を迂回するルートとするが足場が確保できない、樹木を頼りとするが、腐ってぼろぼろと崩れてくるので、身体を斜面にこすりつけながらの通過となる。
 いやらしそうな雪壁7m程度を這い蹲りながら直登する、ザザー!50cm程度の雪ブロックが滑落し登攀者に襲いかかる、幸い横にそれ大事に至らなかった。この後はさらに急斜面の雪壁を50mほど直登する。
 クズバ山に到着しすぐ前には自転車競技のバンクのような雪壁が続いている。雨も止みそうになく、また気温も高いままだ。先を進みテン場を探すか?今日はここでテントを設営するか検討を始める。先にテントを設営出来るか確証も無く、雨も止みそうもないためこのクズバ山山頂をテン場とする。ここは1日目のテン場予定地だが!2日掛かってしまった。

宴会を始め20:00ごろだったか、雨がテントを激しく叩き始めた。降り始めた雨は収まる事が無く眠りにつく。

テントをセットし終える頃には天気も幾分回復し、富山湾も微かに望めるようになる、明日に期待できそうだ。早速宴会。

2日目】54日 雨・曇
 雨も止み天気となりそうだ、予報があたったか。
準備を始めようとすると激しい雨が降り始める、しかたなくテントに停滞する。しばらくすると天候が回復し準備を始めるとまたまた激しい雨、「雨神様にさとられないように準備しないと」。停滞と準備を数回繰り返し遅い出発となる。

昨日積んだ雪ブロックは、雨に叩かれたことと温度が高いのかかなり崩れている。昨晩は多くの来訪者がテントの周りに飛び跳ねていたようだ、挨拶変わりに土産物があちこちに置いてある。

標高:クズバ山1875 馬場島750
累積時間:13時間20分  累積距離:8Km 平均速度:0.6Km/h 

【前日】平成2452日(水曜日)
     大宮21:00−東松山IC−関越道・上信越道・北陸道−滑川IC−馬場島2:30テント仮眠

1日目】平成2453日(木曜日・祭日)雨・曇り 気温 10
     馬場島8:00・・・東小糸谷・・・中山鞍部10:30/10:50・・・テン場P1625、13:50 就寝20:00
     <馬場島からの登り時間5時間50分 距離:3Km 速度:0.51Km/h

2日目】平成2454日(金曜日・祭日)雨・曇り 気温13
     P1625、3:00/9:20・・・クズバ山P1875、11:30テン場 就寝21:00
     P1625からの登り時間2時間10分 距離:1Km 速度:0.46Km/h

3日目】平成2455日(土曜日・祭日)晴れ
     クズバ山3:00/8:30・・・P1625、10:25・・・鞍部12:00・・・馬場島13:50−温泉−昼食−大宮 
   <クズバ山からの下り時間
5時間20分 距離:4Km 速度:0.75Km/h

温泉:みのわ温泉510円 透明 

3日目】55日 晴れ
 昨夜に引き続き、激しい雨の歓迎を受ける、雨が止むまでかなりの時間を擁した。テントを残置し大日岳にアタックするか、あきらめて下山するか暫しの検討を要する。

今日と予備日合わせて2日間の時間はあるが、目前の雪壁が昨日の雨に叩かれ水分を十分に蓄えている事と冷え込まなかったため脆弱となっている可能性が高く、通過は危険と判断し下山することに決定。

下山を決めると天候が回復し晴天に変わる、雪化粧した奥大日岳〜大日岳のルートが綺麗に望め、北側には富山湾も綺麗に見える。残念では有るが記念写真を撮り下山する。

急登は衰えることがなく、やがて巨大な杉が現れる。幹の直径が3m程有りそうな古樹だ。中山の北西尾根に「五本杉平」と呼ばれる場所があり、ここには樹齢1000?2000年の「立山杉」が有るそうだがこれもその一つか?登攀中西斜面から雪崩ている音が時たま聞こえてくる。

やがて霧が発生し視界を遮り出す。疲れた!しかし急斜面は延々と続き休める場所を確保できない。霧はますます深くなり視界約20m程度となる

「この斜面を切ってテン場にするか」「この斜面に?雪崩は?」「此処は大丈夫だ」「あの上は平らだよ」「じゃあそこまで逝くか」……「どこが平らだ!幻覚でも見だしたか」「もう少し行けば緩斜面になりそうだ!」P1625をテン場とする。雪庇を離れ法面側に位置を設定する。

テント周囲は強風に対処するため、雪面をブロック状に切出してテント周りに積み重ねる。当初のテント予定地まで行けなかったがこの天候なら致し方ないだろう。

すぐに50mの急斜面、ここはロープで確保し下降する。尾根が途切れた部分も通過し緩斜面でフルーツタイム。東側には剱岳が良く見える、なぜか「早月尾根」を見て皆な感慨に耽っている。そういえば私以外は、昨年の5月に剱岳に登攀したメンバーだ。

初日に設営したテン場は跡形もなく溶かされ夏道を下山する。下山途中で2人の登山者に合う、地元の人で毎年のように、日帰りでクズバ山に登るそうだ。大日岳の縦走はあまり聞かないようだ。鞍部近くまで行くと中山の登山者が多く見えだす。

雪解けが激しく「東小糸谷」の左岸から右岸に渡渉する。右岸法面の雪が消え進むことが出来ない。左岸に渡る橋(樹木が2本)が有り渡渉する。左岸の川の渕にある雪壁が肩近くまで迫り、ザックと喧嘩する。もう馬場島まで近いので濡れる覚悟で沢を進む。馬場島に着くと白馬での不幸を知らされる。