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 本格的な山行は何ヶ月ぶりになるのだろうか。お正月早々風邪を引き、長引き、すっかり意気消沈の日々。四月のお花見ハイクに久々の参加。桜の花と新緑と皆さんの笑顔にいっぱい力をもらい元気が出てきました。その時の車中の会話で「連休の山行はどこへ行くの?」ああ、そうだ、ボーッとしているうちにもう大型連休だ。気持ちはあせるけど、身体の準備はさっぱりだ。とてもとても気後れがして、詳しい計画すら積極的に聞くこともできず帰ってきてしまった。でも、やっぱり参加したい。一度も雪山にいかずに、シーズンを終わってしまうのは寂しい。大いに迷いながらも思い切って後半の計画、大日岳に参加を決めた。

五月二日夜、小雨の中、家を出発。大宮でメンバーと合流。上市町馬場島Pへと車を走らせる。連休後半の天気予報はあまりパッとしない。途中、雨が降ったり止んだり、闇夜の空が、薄明るくなり、雲の切れ間が見えたりすると、つい明日の天気を期待してしまう。馬場島の駐車場にはすでに数台の車と二〜三張りのテントがあった。私たちもHさん持参の新品のテントを設営、三枚の毛布を引っ張り合いながら朝までウトウト。

五月三日、朝の天気は小雨、ガッカリだ。食事をしながら様子をみる。ようやく雨も上がり出発を決める。うれしい。せっかくここまで来たのだから、せめて雪の有る所まで行ってみたいと思っていたのだ。ガスっていた稜線が少ずつ晴れて久々に見る雪山がまぶしいほど綺麗だ。もう、気分はワクワク。共同装備の分担も終わり、準備ができた。やっぱり雪山三日分の荷物は重い。誰のが一番重いとか、不要な物が入っているとかいないとか、アルコールが重いとか、そんな会話もやけに楽しい。中山より先の東小糸谷より登り始める。巾1m位の流れを渡渉。雪の下が大きな空洞になった箇所の通過。ゆるんだ雪の塊の落下。雪と夏道の境目。濡れた笹のツルツル。夏道とはいえ、全くの藪こぎ。気の抜けない登りが続いた。それでも私の気分は壮快だ。久々の雪の感触がとても嬉しい。急斜面でピッケルを差し込み、力一杯一歩一歩けり込む。リズム良く進むと何と気分の良いことか。雪山サイコー!良い気分だ。でも私の気分とは裏腹に、お天気はどんどん悪いほうへ向かっている。1.500m付近からガスの中、小雨になってしまった。急ぎテント場を探し、テント設営。強風に備えてブロックを積み、雪面を踏み固めてと、結構な作業量だ。それでも本格的な雨になる前にテントに入ることができた。良いタイミングだった。まだまだ陽は高いが、ガスの火を囲みまずはビールでカンパイ。長い夜の始まりです。のんびり、ゆったり、ボーッと過ごすテントの時間はなんて心地良いことでしょう。米飯も上手に炊けて、歩きながら摘んだフキノトウの一品も加えておいしい夕食も終わりました。あとは話のネタ探し、話題はあっちに飛びこっちに飛び、行ったり戻ったり、繰り返して大笑い。なんと楽しい時間でしょう。

五月四日、午前3時起床。外は小雨。朝食のたぬきそばを食べながら様子を見る。昨日の行動時間が短かったこと、今日も早い時間から行動することが出来ないことから奧大日岳ピストンに変更する。そのためには今日は少しでも進みたいがなかなか雨がやまない。8時30分頃ようやく雨も上がって出発する。クズバ山までは夏道がついているが、すっかり藪になり歩きにくい。雪も雨で溶けたかザクザクで割れやすく油断できない。そのうち三、四時間も経たぬうちに雨が降ってきてしまった。なかなか良いテン場も見つからず、ザックやズボンがすっかり濡れてしまった。でも気温が高いのか少しも冷たくない。なんとかテン場に着いた時には雨が本降りになり、テントに入ると同時に雨は一段と勢いを増して降ってきた。運が良いのか悪いのか。濡れたズボンを乾かしながら行動食のお昼を済ませると、いよいよアルコールの出番です。昨夜よりも一層長い長い夜の始まりです。時間がたっぷりあるのに、夕食の準備はジフィーズのお湯を沸かすだけ、とあまりにも簡単すぎます。やることもなく、話のタネも尽きそうな程時間がゆっくり過ぎていきます。それでもなんだか妙に楽しくて笑いが絶えないのです。益々勢いを増す雨にトイレに行くのさえタイミングが大変です。まだまだ、今だ行け!!靴下も濡らさないように、皆裸足で雪の中に駆けだして行くのです。なんと最初の二、三歩はとても気持ちが良くて、そして、思いの外ツルツル滑るのです。こんな事をこの年(?)になって喜々として楽しむなんて想像もしませんでした。雨に濡れてズブヌレになってもちっともヘコまず、すっかり停滞を楽しんでしまいました。

五月五日、午前3時、外は雨が降ったり止んだり、稜線はすっかりガスの中。昨夜の雨の勢いを思うと、テントの周りの雪がどうなっているのかとても気になる。天気の回復はとてもゆっくりで、八時頃にようやくガスが切れてきた。これからの行動をどうするかメンバーで相談。あまりに大量の雨水を含んだ雪の状態や、明日の天気の具合などを考え、残念だが撤退することになった。時々薄日の射す天気のなか下山開始。ザクザクに溶けた雪はピッケルが良く効かない。急斜面で一度ザイルを出してもらい、慎重に下降する。雨のため、雪はずいぶん溶けてしまったようで、ほとんど夏道の下山となるが、藪が多くて歩きにくい。イワウチワ、ショウジョウバカマ、アズマイチゲなどの花が満開に咲き誇っている。

お天気に阻まれ計画通りには行かなかったが、久々の雪の感触、テントの生活、ベストの体調、私は充分楽しみ、満足の山行だった。下山して馬場島Pに着いた時の第一報が、白馬、五竜の遭難事故。やっぱり無理をしないで良かった。見上げた空はすっかり晴れていたけれど、納得のいく撤退でした。行く機会があれば再度挑戦してみたいものです。
                        (To.U記)

立山・大日岳

久々の雪の感触・テントの生活
     笑いが絶えない 停滞を楽しむ

山行実施日;2012.05.03-05
参加メンバー;Hi.T、Sa.H、Ry.K、Ky.T、To.U