黒姫山(長野県 北信五岳)冬山    陽光に輝く峰々

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豪雪に閉ざされた表登山道の急斜面を喘ぎながら登り詰め、稜線に出るとやっと一息入れられる。此処から山頂まではほとんど標高差のない稜線歩きとなる。雪庇に注意を払いながら山頂へと30分程行くと正面が開け素晴らしい景観が拡がる。

北信五岳の「飯綱山」「戸隠山」「妙高山」「斑尾山」を始め「火打山」「焼山」「天狗原山」「雨飾山」そして遠方の北アルプス「剱岳」などの峰々が雪化粧をほどこし、朝日に照らされ眩いばかりに輝いている。

感嘆の声が上がる!山頂の風は強いが暫し寒さを忘れ展望を満喫する。今回の黒姫山は1泊2日の初級雪山山行で計画された。

【1日目】薄曇り

黒姫山に向う車中では黒姫伝説の話が弾むが、諸説入り乱れていてどの話に信憑性が高いのか良く解らない。そうこうしているうちに高速を降り「長水」の街へと向かう。

街は雪に埋もれ、車道は除雪された雪が道路の脇にうずたかく積まれている。
計画された駐車場付近まで来ても、駐車スペースは雪に閉ざされ見つからない。地元の人に確認するが有効な駐車場がなく、なんとかスペースを見つけ駐車を行う。

雪が多いため、ワカンを履いて登山を開始する。ペンションらしき建物を横切り黒姫山方面へと進む。黒姫山は、西方にほぼ一直線である。

広々とした草原のような箇所からは、急峻な尾根を右手(北面)に望み山頂を目指す。

:乙妻山

:高妻山

:五地蔵山

:九頭竜山

:戸隠山

標高:黒姫山2053 長水登山口800
累積時間:8時間50分  累積距離:8.8Km 概略傾斜19°

1日目】平成2433日(土曜日)薄曇り
 大宮7:00-東松山IC-信濃町IC-長水登山口12:00・・・
 テンバ
P1500 m14:00、就寝21:00
  時間:2時間20分 距離:2.7Km ワカン速度:1.15Km/h

2日目】平成2434日(日曜日)晴れ 気温5
  起床3:30、テンバ6:20・・・稜線9:00/9:10・・・黒姫山頂9:40/9:50・・・
 テンバ
11:20/12:10・・・登山口13:40-温泉-昼食-大宮
  時間:6時間30分(テント撤収50分は除く) 距離:5.8Km
 平均速度:
0.9Km/h
 <テンバ〜山頂 登り時間3時間20分 距離:1.7Km 
         ワカン速度:
0.51Km/h
  <山頂〜テンバ 下り時間1時間30分 距離:1.7Km
         ワカン速度:
1.13Km/h
  <テンバ〜下山 下り時間1時間30分 距離:2.7Km
         ワカン速度:
1.8Km/h

温泉:杉野沢温泉「苗名の湯」450円 透明 

そこを回り込もう、その木の間!稜線に出る少し前に夏道方向に回り込もうとすると。「ダメ直登して!気温が高いから雪崩の危険がある。」「樹木から落雪した雪が転がりながら大きくなると怖い」。 
 このようなやり取りを繰り返して冒頭の稜線に到達し、山頂展望を満喫して下山する。

 「急斜面で転倒すると止まらないのでゆっくり下山しましょう」。急斜面をゆっくりと下山するが、少し斜面になる頃にはそれぞれがトレースのない新雪を楽しみながらテンバへと進む。
テントが見え始めたころ私は足の裏が攣り出した。暫しその場に立ち止まり小休止する。

テントを撤収し駐車場へ。ここからは、ワカンを履く者とツボ足組みに分かれる。

私は昨日のトレースを期待してツボ足で下山する。気温は更に上がり、溶け始めた雪がシャーベット状になり始めたため油断すると踏み抜くことが出てきた。 

下山すると、昨日あれだけ積もっていた道路の雪が溶けている。

あとは温泉へ。黒姫温泉に行くが営業していないので新潟県側の温泉に向う。
    (Ry.K記)

【2日目】晴れ

 快晴!輝く白い雪原と朝日を浴びてピンクに染まった樹氷、そして抜けるような青空、眩しい程の好天気。

 この天気なら素晴らしい展望を望めそうだ。後ろを振り向くと、綿雪のような雲海が発生し、朝日が射し込んでいる。

雲海が発生すると天候は良く成るんですか?「雲海が厚くなると天気は降り気味、薄くなるとが好転する兆し」とのアドバイスをもらう。
 好調な登山も急斜面が延々と続き、速度が急激に低下する。“急斜面ではワカンを蹴り込まないと!”一生懸命蹴り込んでいるつもりだが、後方からは“まだ蹴り込みが足りない!”との叱咤が飛ぶ。

トレースは無く、表示を注意しながら歩くが赤テープは見当たらない。積雪が多く雪で隠れてしまったのか?

麓にある「黒姫山高原スキー場」の前前日積雪情報は2.3mであった、この近辺では45m程度有りそうだ。変化のない急登の雪道が続く。

落葉樹は雪化粧し、雪を踏み込む足音だけが静寂の中にこだまする。
時折吹く風が樹木を揺すり、梢に凍結した雪を撒き散らす。目の前が雪のカーテンとなり視界を一瞬閉ざすと同時に、大量の雪が首筋に降り注ぐ。

雪は圧雪されているようで、ワカンでの歩行は膝程度までしか沈み込まないが、延々と続く直登にかなり苦戦を強いられる。

山頂方面を望むと、大岩の上に2mほど堆積した雪のブロックが目の前に現れ出した。あんなのが落雪したら雪崩を誘発しそうだ。早々に通過することにする。

登山道は一本調子で登っていて、テンバに出来そうな場所がなかなか見つからない。傾斜が少し緩やかになったP1500付近にテントを2張り設置する。

雪がほどよく圧雪され、スコップでの整地がスムーズに進む。早速宴会を始め明日の登頂を期待する。

樹氷まじりの樹林帯

下山途中での休息の一時。何を考えているのか?

雲海に朝日が差し込む

明るい樹林帯を登る

この尾根が夏道であり、傾斜の緩やかになった所からこの尾根に取り付かなければならない。

P900付近の林道を横断するあたりから登山道が急登となりだした。樹林帯の雪深い急傾斜を直登し、高度を稼いでゆく。

後ろを振り返ると、モヤに霞んだ野尻湖が俯瞰出来る。「ホントだ“上から見ると、野尻湖が芙蓉の花に見える”」と歓喜の声が聞こえる。

これは前日の打ち合せで「野尻湖を上空から望むと、芙蓉の花に見えるので別名、芙蓉湖と呼ばれている。」とのこと。ただ残念ながら私はあまりよく見えなかった。

妙高山を背景に(Te.I氏撮影)

おかしい、足元を確認すると登山靴が前にずれ、ワカンの固定バンドが緩んでいる。

あれだけバンドを締め付けたのにまだ緩いのか?バンドの掛け方を変えてみるが、また直ぐに緩んでくる。

再度バンドを締め直すためワカンを見ると、後ろ側の横バンドが爪に5mm程食い込んでいる。これは、ワカンを蹴り込む事で登山靴が前にずれようとしているからだろう。

つまり靴と横バンドは確実に固定されているが、ワカン本体と固定バンドの緩みから蹴り込むことによりずれが発生しているようだ。下山してから詳しく検討してみよう。