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西穂〜前穂・奥穂

穂高縦走は三日目も好天気

8月30日           

最後の日は3時半起床、穂高岳山荘の土間のテーブルで、山小屋のホウ葉ずしのお弁当と温かい飲物で朝食をとり出発の準備をしていると、にわかに外で人の声。つられて外に出ると小屋の広場には、カメラを持った人などが集まっており、だんだんと東の空が明るくなって常念岳が大きく現れ、右手前方には屏風ノ頭から前穂北尾根の鋭い岩峰郡が、圧倒的な存在感を持って目の前に飛びこんだ。朝日に浮かぶその姿はとても美しくもあり、また怖くなってしまうほどの威厳をも感じた。だいぶ明るくなって5時少し過ぎに昨日越えてきた奥穂に登り返す。

 1時間程で奥穂の山頂に着く。昨日の午後はガスっていて周りの山々は、余り見えなかったが今日は360度の大パノラマ。まず西には昨日越えてきたジャンダルムが目の前に奥穂高岳を護るかのようにそびえたち、南西には一昨年の暮れに恒例の年末雪山で登った焼岳が赤茶けた南峰、北峰をもって表れ、奥には乗鞍、御嶽山、はるかかなたには白山まで見渡せた。北は槍ヶ岳がすぐそば、その奥には鷲羽岳、ずうっと奥には薬師岳が大きな山容を見せていた。いつまでもみていたい景色であったが、しっかりと脳裏に焼きつけ、吊尾根を下り前穂に向かう。急な下りやトラバースの連続で、安全に気持ち良く登ろうと思っていたのでスローペースになり、リーダーやMさんの足をひっぱったかも知れない。紀美子平から前穂に向かうが登りのほうが、前が良く見える分、気持ちが落ち着く。

山頂は広々として、北に涸沢、南に上高地が眼下に広がり、目の前には明神の岩峰が大迫力で連なっていた。山頂で出会った登山者が南の端から声をかけてくれて、「ここから奥又白池が見えるよ」と、教えてくれた。北尾根の南に陽に照らされてキラキラ光っている池があった。小説に出てくる池で名前は知っていたのでとても感激した。奥又白の池からは登山道もずうっとつながっていた。

前穂から紀美子平の下り3分の2位のところで急に前方で大きな人の声、事故があったらしい。吊尾根の登山道で女の人がけがをした模様で、まもなくヘリコプターの音、現場でホバーリングをして隊員が1人ロープで降りた様子。ヘリコプターは現場から離れて、気流に影響されない所まで飛んで、ホバーリングしてまっている。しばらくするとヘリコプターは再び現場に飛んでいき怪我の人を乗せて飛び去った。スピーディーな救助だったので、感心すると同時に、上高地に着くまでは気を抜かないようにと思った。

紀美子平から岳沢ヒュッテまでの下りも梯子、鎖、ガレ場の続く長い下りだったが、途中からは、トウヤクリンドウ、うさぎぎく、とりかぶと、オヤマノリンドウ、なども咲いていて、秋の気配を感じ、心もなごんだ。

 新しくなった岳沢ヒュッテで小休止のあとは、ひたすら上高地を目指すが、最後まで岩だらけ、ガレ場続きで、林道に出たときはたとえようもない程、嬉しかったと同時に老化している膝が、何とか持ってくれてほっとした。

 ずうっと行けず、もう無理かなと思っていた穂高登山、西穂から奥穂、前穂まで縦走できたのはなんと幸運なことか。よきリーダー、よき仲間と、最高の天気で気持ちよく登れたことに感謝したいと思います。  (Ki.K記)

馬の背にて