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白山

         四つの体験   

4月の始め、「7月の三連休に白山にいきましょう。」というHiOさんのお誘いに嬉しくすぐ飛びついてしまった。ところが、その後、6月半ばすぎから、咳と微熱が1カ月続き、薬をのんでもなかなか良くならず。白山を目の前に控え、焦るばかり。かかりつけの診療所で「なんとか、元気に白山に登れる身体にして。」と泣きつき、2時間の点滴を受けた。不安いっぱいのこの私にドクターは耳元で、「山に行けば元気になるよ。」と、背中を押してくださった。ホッと安心して出かけることができました。久しぶりの長丁場の山。ガイドブックや地図を穴があくほど、読んだ。観光新道は健脚コースとある。我々はこの観光新道から登ると聞き、またまた心配事が増えた。私は初心者だからね、健脚コースなんて無理無理。前日民宿に泊まったが、夢まで見てしまった。寝言でも騒いだようで、HiOさんから、「ゆっくりいくから大丈夫よ」なぐさめられた。別当出会から、観光新道に入る。すぐに、ササユリ、キスゲが我々を迎えてくれた。ササユリをみたのは初めてで急に元気がでてきた。急登といわれる登山道も数多くの高山植物に出会い、登りの苦しさをまったく感じない楽しい道だった。名前のわからない植物に出会うと、元大宮労山のSさんが後ろから丁寧に教えてくださった。まるで植物観賞会をしているようで、とても愉快。長丁場の山だと思っていたのに、アッと言う間に室堂についてしまった。室堂の山小屋は大きな建物、そして、とてもきれい。食堂ではたくさんの人々が働き、まったく地上と変わらないにぎやかさだ。今回の山行で初体験が四つあった。まず、一つ目、室堂センターに診療所を見つけた。なぜか急に頭痛、熱っぽさを感じ、さっそく診療所を訪ねた。ドアを開けると、病院の薬局のように、ずらりと薬が並んでいた。ベットが二つ、もうすでに先客あり。入口に近いほうのベットに頭から、布団をかぶり、いびきをかいてねむっている女性。その傍らで付き添いの女性が茫然と突っ立っていた。デスクに体温計があったので、椅子に腰かけ、私は熱を計っていると、また一人、真っ青な顔をした女性が入ってきた。若いドクターに「夕ご飯は食べたのですが、頭が痛いのです。」と、訴え、すぐに、奥のベットにもぐりこんでしまった。あっけにとられているこの私に「どうしましたか。」「はい、ちょっと熱っぽいかな、でも熱はありませんでした。ちょっと頭が痛いかな、咳も。頭痛薬は持ってきたのですが、咳止めがないのです。」というと、咳止めをくださった。それで、会計をしようと、健康保険証を出すと、「ここでは、保険証は取り扱っていません」の言葉に、一瞬、血の気がひいた。しまった、ここは自由診療だったのか、こまった・・「おいくらですか」と、おそるおそる聞く。「タダです」の答えにびっくりして「それは、悪い!」と叫んでしまった。「こちらは無料ですからね」の言葉に「申し訳ありません」お詫びをして、咳止めをもらい、診療所を後にした。一つ目の初体験でした。夕日を見ようと皆、外で待つ。燃えるような真っ赤な夕日を楽しみにしていたが、まぶしい、もう目がくらむ。白内障が急に進んだように目がおかしくなってしまい、最後まで見ていられなくなった。高い山の上では夕日は赤く見えないのですね。御来光も同じ、目をやられてしまうので、私は別のところを見ていた。二つ目の初体験でした。あたりが夕闇に包まれ、さて、自分たちの寝床へ。二段ベットで我々は上の段。垂直の梯子、2mはあるでしょう、こわい。上がれない、しかし寝るところがないのだから、上がるしかない、上にあがったら、降りられない、夜中のトイレの時どうしよう、部屋ではもう皆、眠っているようです。我々だけ、小声でワイワイ、ヒソヒソ混乱。白山の登山道は怖いところがまったくなかった。一番の難所は山小屋の二段ベットの梯子だった。いざとなったら、隣にいる夫に助けをと、思ったが、もうすでに夫は深い眠りに入っていて、押しても、つついても起きなかった。ごそごそしていた我々の仲間もすぐに、スウスウ寝息が聞こえ、私一人だけ興奮して眠れなかった。夜中に三回もトイレに行ってしまった。恐怖の梯子はなんとか降りられた。三つ目の初体験。翌朝早朝、山頂に向かって出発。御来光を拝むためだ。大行列。山頂でお神酒をいただきました。杯の中にはお酒がちょっぴり入って、それでも、朝の一杯は、ききました。四つ目の初体験でした。難ずるより産むが易し。胸ドキドキの充実した山行でした。Sさん、HiOさん御心配ばかりかけてすみません。お世話になりました。(hama記)