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節分草と姨捨の棚田巡り

◆姨捨の棚田

  『灰で縄を編め!』などのお殿様の命令に村人は答えられず困ってしまったが、隠し住まわせていたご老人が答を教えてくれた。それ以来姨捨の風習はなくなった。この話の山と一説では言われる冠着山(国土地理院の地図では括弧内に姨捨山とある)の近くの姨捨の観光会館の駐車場に停めさせていただく。建物の中は食堂があり、土産物と芭蕉や一茶他の文芸品も展示されている。食堂の更科蕎麦も魅力的だったがお腹がまだ空いていないので長楽寺から棚田巡りに出発する。

山行実施日;3月18日
参加メンバー;Ka.T、Ma.S、Hi.M、To.F

◆春を告げる花

 立春の前の日2月3日が節分の日、その時期に咲くので節分草と名付けられた花がある。関東地方では石灰岩地の秩父や栃木にも自生地があり月遅れの節分の3月3日頃に開花する。信州千曲市の節分草自生地は更に開花時期は遅れ3月中旬以降になる。
 この節分草も御多分に漏れず絶滅危惧種である。以前秩父に探しに行った時見つからず、近所の方に訊ねると「昔は桑畑にあって雑草として抜いていた。うちの庭にはまだあるから入って見て行きな!」と言われ写真も採らせて戴いたことがあった。昭和天皇に「雑草と言う名前の草はない」という御言葉があるが「雑草」と言われた時代の方がたくさん咲いていたとは何とも皮肉である。

 

 観光会館も棚田もお寺も、姨捨伝説でなく『月、月、そして月』の文字であった。田植え前の水の張った田には歩くたびに田んぼ毎に月が映り、善光寺の御開帳とも重なり大にぎわいと言う。
 お目当ての冠着山あるいは三峰山には行けなかったがその下見と考えれば良いのかな!?と同行者に詫び、自分を慰めたい。

「テント泊(三峰山麓に大池キャンプ場あり)で月見山行も良いね!!」そこで「山菜天ぷらも!!」「ニ十六夜山にも行きたいね!!」そんな会話も弾んだ。

 3月6日はニ十四節の『啓蟄』、3月16日からは七十二候の『菜虫化蝶』(ナムシチョウトナル)。これらも月遅れで現れるのが常のようだが、早くも体現出来たのは嬉しい。民家には福寿草などが、畔には蕗の薹が開いている。が、道端には一ヶ所のみだが雪があり、・馬酔木を除き梅や桜などの木々の花は全く見当たらない。埼玉とはやはり異なっている。
 千曲市戸倉の自生地にはボランティアの方が熱心に案内し説明してくれた。斜面に粉雪が降ったようにちょうど満開で咲き誇っている。近くで観ると白い花びら(実は萼)の内側に黄色の花弁(突起の中には蜜があるとのこと)、その内側に青紫色の雄しべ、ピンクの雌しべが見える。何とも言えない色の組合せであり、質素を旨とした誇りに満ちた高貴な人のように感じられる。 

 傍らには東一華(アズマイチゲ)の蕾もあり一部の株はピンクに色づき始め午後にも咲きそうだった。片栗の斑の入った小さな葉や延胡索の葉も見られるがこちらも花はまだまだ先のようだ。

 棚田の上端の絶景の眺められる塚のような小さな丘で昼食とした。目前に棚田、千曲川や家並み、そして善光寺平が広がり、その奥に鏡台山などの山脈が見え、更に遠くには白く雪を被った山(飯綱山か?)も見ることが出来る。後ろの姨捨駅では二両編成の列車がスイッチバックで行ったり来たりしている。が、量編成も便も多目の特急は停車もスイッチバックもせず通り過ぎる。北陸新幹線は3月14日に開業したが、通過地や山村地はますます過疎化が進むように感じられる。
 差し入れも戴きのんびり昼食を楽しんでいると今年初めて見る蝶が飛んでくる。ここ数日の暖かさで出てきた成虫で越冬した「天狗蝶」と「瑠璃立羽?」だろう。